ゆとり教育

教育に関する問題は、国家の根幹に関わる非常に大きな問題です。そのような教育の現場にあって、今でもその是非を問われているのが、数年前に導入されたゆとり教育です。1980年代にピークを迎えた大学受験のための知識偏重型教育に対し、学習者の多様な能力を伸ばすことを目的として、ゆとり教育が実施されるようになりました。

ゆとり教育の経緯と目的

ゆとり教育は、「学習者が自主的に自分の能力を伸ばすこと」を目的として提案された考え方です。ゆとり教育は日本の教育の要である、文部科学省によって推進されています。ゆとり教育とは簡単に言えば、勉強する時間や内容を小さくして、空いた分の時間で生徒に自主的な学習態度を養わせることを目的としているのです。これには、従来の知識偏重型教育への反省があります。

知識偏重型教育の問題点

従来の知識偏重型教育は行き過ぎた受験競争を招き、この受験競争のストレスから、不登校やいじめのような問題が発生しました。つまり文部科学省は、詰め込み型教育によってあまりにも生徒に時間的・精神的なゆとりがなかった事が、教育現場で起きている数々の問題点の原点と考えたのです。

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ゆとり教育の利点

ゆとり教育が本格的に実施されてからまだ間もないこともあって、ゆとり教育の利点が見えていないのが、教育現場の本音です。ゆとり教育によって生徒の自主性を伸ばすことが、文部科学省の考えるメリットでした。しかしゆとり教育を実際に実施してみても、そのようなことは起きませんでした。ゆとり教育が現場に導入されるまでは、賛成・反対の声が両方聞かれましたが、現在ではそのような事もなくなってしまったほどです。

ゆとり教育の問題点

ゆとり教育がもたらした利点がほとんど見えないのに対し、その問題点は幾つも見えています。いずれの問題点も、今後の日本の行く末を決めると言っても、大げさではないような問題ばかりです。

ゆとり教育の問題点1・基礎学力低下

ゆとり教育が実施される前から、ゆとり教育による基礎学力低下を懸念する声が多数ありました。そしていざフタを開けてみると、その通りになってしまったというわけです。ゆとり教育による基礎学力低下は著しく、分数の計算を間違える大学生までいるほどです。従来は高い基礎学力水準が日本のウリでしたが、ゆとり教育後は定期的に行われている国際学力テストでも、軒並み平均点が下がっているありさまです。

ゆとり教育の問題点2・格差の顕在化

ゆとり教育によって学校で勉強する時間が減った分、本格的に子供に受験勉強をさせるために、親の塾へのニーズが上昇しました。この結果、塾に通うことができるある程度の収入のある家庭と、そうでない家庭との間で、教育機会格差が明確に開きました。また首都圏に生活する生徒と、地方に生活する生徒の間の学習機会均等も失われました。その他にも塾と同様に、私立の進学校に対するニーズが高まり、ここでも世帯収入間格差が顕在化しています。

ゆとり教育の何がまずかったのか

このように、問題点やデメリットばかりが目立つゆとり教育ですが、そもそもゆとり教育のどのような点が、それほどまずかったのでしょう。この点に関しては、識者や現場から多くの意見が出ていますが、以下の2つの点は特に問題として議論されるケースが目立ちます。

ゆとり教育の何がまずかったのか1・ヴィジョンの曖昧さ

ゆとり教育のまずかった点には、ゆとり教育後の世界に対して明確なヴィジョンが全く見えていない事があげられます。これは文部科学省自身にも言えることですが、ゆとり教育によってどのような社会をめざすのか、ヴィジョンが全く定まっていないのです。

ゆとり教育の何がまずかったのか2・概念の曖昧さ

ゆとり教育のまずかった点として、そもそもゆとり教育の概念そのものが明確でないこともあげられます。ゆとり教育によって「生徒の自主性を伸ばす」とはどういう事なのか、「生徒の多様な能力を伸ばす」とはどういう事なのか、あまりにも曖昧なのです。これでは現場が困るのも、無理がないことです。

ゆとり教育の見直し

このようなゆとり教育の問題点を文部科学省も重視し、見直しにむけてさまざまな指針が検討されています。具体的には「人間力の向上」「学習内容の定着」「学習意欲の向上」「地域性の尊重」が、その柱になっています。これらの柱に基づいて、国語と理数系科目の基礎学力向上を考えているようです。しかしこれらの柱が、ゆとり教育同様いずれも曖昧な概念に終始しているため、再び論争の的になっています。

ゆとり教育の総括が早すぎるのでは・・・

詰め込み教育の反省で、ゆとり教育が生まれました。しかし子供の時代に、誰にも言われないのに、自分から進んで勉強した経験のある人というのは、どれくらいいるのでしょう。たいていの生徒は、親や先生が怒るからしょうがなく勉強していたはずです。しかし現在のゆとり教育では、あくまで生徒の自主性を尊重しています。これでは、基礎学力低下が起きるのは当然でしょう。しかし基礎学力低下が起きることは、ゆとり教育実施前からじゅうぶん予想されていたことです。それを覚悟の上でゆとり教育を導入したのに、ゆとり教育のデメリットにばかり目が行くようでは、この先真の教育改革ができるのか大いに疑問が残ります。ただでさえ教育の成果というのは、他の分野に比べて実績が現れるまでに、時間がかかるものです。文部科学省をはじめとする教育関係者には、もっと長期的な観点に基づくグランドデザインを持ってほしいものです。

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